花火といえば、夏の夜空を彩る日本の風物詩。
ところが、今、いくつかの歴史ある花火大会が中止せざるを得ない状況に追い込まれている。
宮城県の加美の花火大会もそのひとつ。
加美商工会は22日、本年度の通常総代会を開き、32年前から宮城県加美町中新田地区で毎年8月14日に行ってきた「かみ鳴瀬川大花火大会」を開催しないことを決めた。2020年東京五輪を控え、警備員の確保が難しいことなどが理由。
事務局によると、五輪プレ大会開催などの影響で、警備員の人件費が高騰している。お盆の時期で、交通指導隊員ら住民の協力も足りず、十分な警備態勢が組めない恐れがあるという。約400万円の協賛金を集める会員の負担も考慮した。
花火大会は、水中スターマインなど約2500発が打ち上げられる。昨年は約3万人が訪れた。河北新報 2019年05月23日木曜日 オンラインニュースより
昨年は、奈良県葛城市で1963年から続く花火大会が中止になった。違法駐車対策への警備費増などが理由だ。福岡市の西日本大濠花火大会も安全性が確保できないとして、昨夏で終了した。岡山県玉野市の玉野まつりは、同様の理由で今年の花火打ち上げを休止にした。
ようするに花火大会を開催するときの警備費がふくらんでいることが主な原因となっているようだ。大きなイベントに警備員は必須だけれど、その経費がイベント開催そのものを休止に追い込む。安全安心に対するコストは、イベントに限らず、けっこう高くなっており、それが現代社会の要請であることはわかりつつ、生産に直結する経費ではないため、本末転倒の難しい問題点をはらんでいる。
諏訪湖の花火大会は、昭和24年から続いている歴史あるイベント。戦後の復興を願って、毎年8月15日に開催されつづけ、昨年は打上数で日本一になった。諏訪湖の湖面から打ち上げられる4万発の花火は圧巻だ。お盆状になっている地形から、花火が打ち上がる際の音が山に反響して、凄まじい音響効果をあげている。
湖と山を舞台にした花火大会はほかにもあるけれど、諏訪湖の花火は別格である。観客たちの心が奪われてしまう。有無を言わさず、人々を引き寄せる魅力があるように感じる。
花火大会当日は、上諏訪駅から諏訪湖周辺は観光客であふれる。マイカーで運良く駐車場に停められたとしても、大会終了後は大渋滞に巻き込まれること必至である。夜中の零時を回らなければ渋滞が解消されないエリアもある。
警備員の数も相当数に上る。ほかの地区の花火大会中止の顛末は他人事ではないのだ。
諏訪の花火大会は、いまのところ継続の方向ではあるけれど、違法駐車や警備経費の増大など、同様の課題を抱えている。いつまでも残ってほしいと諏訪市民だけではなく、日本中の花火ファンが願っているはずだが、いつまでもあると思うな、親と花火大会。油断はできないのだよ。
記事:毒島 改蔵